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『ケプロン・くろだのこうそう』について

中谷宇吉郎集 第八巻

中谷 宇吉郎

中谷宇吉郎『中谷宇吉郎集 第八巻』。同一底本的分册已合并为一书。收入:『ケプロン・黒田の構想』について、桂浜、北国の春、金鱗湖、高度八十マイル、写真と暮らした三十年、寅彦の遺跡、南極・北極・熱帯の雪、百科事典美談、北海道開発に消えた八百億円、母性愛の蟹、娘の結婚、雪の化石2、六三制を活かす道、ピーター・パン。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 85,890 字 · 178 页

青空文庫

雪の化石2

雪の化石をつくろうと思い立ったのは、もう二十年以上も昔の話である。

昭和五年に新しく出来た北大の理学部へ赴任して、間もなく雪の研究にとりかかった。そして冬ごとに、十勝岳の白銀荘へ出かけて行って、雪の結晶の顕微鏡写真をせっせと撮っていた。

十勝岳の雪は、結晶の美しさとその種類の豊富さという点ではおそらく世界にも類例が少ないように思われる。その後いろいろなところで、雪を調べてみたが、十勝岳に匹敵しうるところは、グリーンランドの氷冠上くらいのものである。

二、三年十勝岳へ通っているうちに、何とかしてこの美しい雪の結晶を、そのまま固めて、暖国の子供たちに見せてやれないものかと思うようになった。動機は、ドイツの雑誌に、氷の化石の話が出ていたのを見たからである。

ドイツの北方海岸に近いところから、ときどき妙な化石が出ていた。形はしゅろの葉を小さくしたような形で、まっすぐな葉が、放射状に広がり、そういう群が点々として一面にちらばっている。どう見ても、しゅろ系統の植物の葉としか思われない。そこで化石学者の間でも、何か未知の植物の化石とみなされていた。中には、その植物の名前までつけた人があった。