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ここのつのかぎ

九つの鍵

野村 胡堂

「少年時代」1949(昭和24)年1月~4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,349 字 · 42 页

青空文庫

三郎は驚いて三階へ飛上りました。が、そこにある四つの部屋――ことに自分と妹の愛子の部屋などは、イスの足までヘシ折って、スタンドの台の大理石を叩き割るほどの恐ろしいありさまでした。

相手の悪者共は、昨夜奇抜な方法で愛子を誘拐し、兄の三郎をそこに釘づけにして、留守番を襲ってこんなにまでも荒し抜いたのでしょう。

青年狩屋三郎は、智力体力共に万人に優れた、世にも珍らしい男で、悪者共もこれと正面から衝突して、四つに組んで争うことを恐れ、卑怯な詭計を設けて、ビルディングに引きつけその留守を狙って徹底的に家を荒して行ったのでしょう。

その目的は何んであったか、狩屋三郎にはよくわかります。

「やったな」

三郎は思わず唇をかんで、拳固を振りましたが、それにしても従弟の植野誠一をはじめ、奉公人がひとりも姿を見せないのは心配でなりません。

念のために、食堂の隣りの洋風の居間――いつもそこで団らんの半夜を過ごす十畳ほどの部屋を覗いて見ると、いるいる、そこにはまん中の大テーブルを囲んで、植野誠一とひとりの書生とふたりの女中が、おとぎばなしの「眠り姫」の家来共のように、めいめいの姿態で、真に千年も眠りこけた姿で、昏々として深い眠りにおちているのです。