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ここのつのかぎ
九つの鍵
野村 胡堂
「少年時代」1949(昭和24)年1月~4月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 21,349 字 · 42 页
それはこの話を秘密にしておきたいためではなく、どんな人間がぼくらを監視しているか、悪者の正体がたしかめたかっただけなんです」
「でも」
幸子はまだモジモジしております、が、
「かまいません、ぼくはそれより、幸子さんや馬吉君にも聴いてもらって、――はなはだ勝手だけれど、力を添えて欲しいんです」
狩屋三郎にそうまで言われると、幸子もツイ踏みとどまって、この事件の渦中に飛び込むほかはありません。
「では」
幸子と馬吉は、ようやく安楽イスの上に落着きました。
「聴いて下さい、――祖父の三右衛門は九つの鍵を阿蘇の噴火口に投げ込んだには違いないが、それは悪者共の気をそらせる詭計で、九つの鍵はそれっきりではなく、別にもう一つそろいがあったことは、たれにでもすぐ考えつくことだろうと思います。どんな鍵でも、二つずつあるのが常識で、一度はだまされた悪者共も――もう一と組鍵があるはずではないか――と気のついたのも無理のないことでした」
「――――」
「祖父は一代に巨億の富を積んだだけに至って考えのち密な人で、この上もなく物事に行届きました。義弟鬼頭九八郎の性格から、まもなくこの事あるを予見して、悪者共に追われて命からがら阿蘇山に逃げ登る前、予備の九つの鍵をバラバラにして、とっさの間に、どんな人も想像のできない方法で隠してしまいました。