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ちぶさ

乳房

宮本 百合子

「中央公論」1935(昭和10)年4月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,932 字 · 56 页

青空文庫

「俺は第一班だが……これは個人的意見なんだが、ストをやることに俺は絶対、賛成だ!」

一言一言に重みをつけてそう云っておいて、

「但し、だ」

一転して巧に全員の注意を自分にあつめた。

「但し、全線が一斉に立たないならば、ストをやることは、俺は絶対に反対だ!」

ひろ子は胸の中を熱いものが逆流したように感じて唇をかんだ。何とこの幹部連中は狡猾に心理のめりはりをつかまえて、切り崩しをしているのだろう。自分がこの会合で発言権のないお客にすぎないことをひろ子は苦痛に感じた。炭がおこって火になるときだって、どこかの一点からついて全体へうつってゆくのではないか。それだのに――。

言葉使いの意味ありげなあやに煽られて、パチ、パチ手をたたいたものがあった。

「力関係を考えないで、何でもストをやろうなんて、それこそ小児病だ。今、ここだけでなんてやれるかい!」

「議長!」

再び甲高い声が主張した。

「力関係って云ったって、相対的なもんだぜ、放ったらかして、こっちから押さないでいても有利になって来る力関係なんて、資本主義の社会にあるもんか。現に強制調停までにだって、一ふんばりふんばればやれたんだ。