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かんぱい

乾杯

豊島 与志雄

――近代説話――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,788 字 · 18 页

青空文庫

「しかと、方策を立てなければなりますまい。お母上はあの通りでいられますし、あなたの責任が重いというわけでございますよ。」

ただそういう風に、塚本老人は言いました。

ところが、その方策の一つがもう、塚本老人自身によって考案され、実行に移されかかっているのでした。

山川家が所有してる工場が一つありました。規模はささやかなものでしたが、そこに、可なりの資材が蓄積されていました。それは塚本老人の配慮に依るとのことでした。資材のなかの主要なものとして、美製鋼板、俗にミガキ鋼板というのが約八十噸あまりありました。

そのことを、工場長の上原稔から聞かされて、山川正太郎はちと意外に思いました。ところが、それに関する上原稔の話は、更に意外なものでありました。

概略しますと、次のような話でありました。この八十噸のミガキ鋼板は、公定価格の三倍ほどの時価で、直ちに引受者がある。つまり、八十万円ほどになる。ところで、今回、山川さんが某政党に領袖の一人として加入するについて、相当の金が必要である。そこで、右の鋼板を売却したいと思うが、如何であろうか。

それが、塚本老人からの申し込みでありました。