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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

その席には、日本流の窮屈さがあり、またその上に古い中国の長幼の序とでもいう風な礼儀の窮屈さも加っているようであった。長テーブルの中央にはひとはちの盛花があって桃色のヒヤシンスが匂っていた。

なんとなし手もちぶさたな時がすぎて、やがて日本側の主賓であるある評論家が入って来た。縞のズボンに黒い上衣をつけ、背の高いからだに、伸子が写真で見なれた顎のはった顔と、ぴったり真中からわけられた灰色っぽい髪がある。

「やあ、どうもおそくなりまして……よそからまわって来たもんですから……」

「いえ、どうぞこちらへ」

その評論家は、長テーブルの上座にあけておかれた席にかけた。

司会者であるその新聞の婦人欄の記者が立って、挨拶をした。新しい中国の教育のために活動しようとしている女性たちの希望ある前途を祝福する意味での小さい集りとして、話した。それを、黒背広をきた小柄な引率者の一人が中国の言葉にうつして女学生につたえた。女学生たちは、うなずくように濃い黒いおかっぱを動かし、幾分椅子の上でのり出した。

「では、これから早川先生の御話を願いたいと思います」

記者は、上座に向ってちょっとお辞儀をした。