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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
といった。
「何にもしらずにお嫁に来てみれば、親類書のどこにものっていなかった四つばかりの男の児がチョロチョロしていてさ、その子を、俊一、俊一っておばあさまが可愛がっていらっしゃるんだもの。私は本当に、これゃ大変なところへ来た、と思った。誰の子だか分らないうちは、決して、奥さんになるまいと決心してね、つきそいに来たばあやを次の間にねかして……だって、それゃそうだろうじゃないか」
「それが、あの俊ちゃんだったの?」
泰造の伯父の息子で、その頃はもう三菱につとめている青年があった。
「そうだったのさ、だからやっと私も安心したようなものの……」
多計代は、
「お父様もお気の毒に」
と笑った。
「私が月を眺めて泣いてばかりいるもんだから、ほかに好きな人でもあったのかっておっしゃった……そうじゃなかったんだけれど。――でも、私はお父様に感謝しているよ」
素直な声で多計代はいった。
「よく私のいうことをきいて、ひと月もふた月も、いうままにしておいてくだすったと思って。――多計代もかわいそうに、いきなりこんなごたついた家へ来させられてそういう心持になるのも無理はない、といっていらした」