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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

自分で力で建てたい家を建ててどこが悪いのさ、ばかばかしい」

そして、つけ加えた。

「大変妙な話さ。この頃は、何でも無産ばやりだけれど雇ってくれるものがなかったら、どうして貧乏なものは働いて行くのさ。雇ってくれるものがあるからこそ食って行けるんじゃないか。それを有難いとも思わないで……」

こういう話になると、泰造は、決して仲間に入らなかった。ヴェランダでいねむりをしている風をした。

佃と別れて一人暮しをはじめようと決心した頃、伸子は前崎の家に住めないかと思って多計代にきいてみたことがあった。

「おや、こんどは、あの家でも御迷惑じゃないと見えるね、御方便だこと!」

そういってからすこしの間考えていたが、多計代は、

「おことわりだね」

と、はっきりいった。

「あすこは、私たちのために建てたところだからね。ベッドだってほかにないんだし」

そういえば、前崎の家では洗面器にしろ家族は一つところを使うようにだけ作られている。多計代にすれば、そういうこともいやなのであろう。伸子はいそいで、

「いいのよ、いいのよ、決して無理にお願いしているんじゃないんだから……」

と、自分の希望を撤回した。