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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
風景の晴れやかさや別荘のいかにも快適らしい外見と、多計代の不機嫌とを見くらべると、チェホフかゴーゴリの小説に諷刺的に描かれている細君のようで、ばつがわるかった。水をもらいにバケツを下げて街道の漁師の裏へ入って行くと、そこには半分裸のような男女の子供らがはだしでついて来た。どの児の髪の毛も潮やけで赤く、ばさついている。黙ってとりかこんで、水をくんでいる「東京の邸」の女を眺め、なお街道をよこぎって崖の下の、細道の入口までついて来た。そこから奥へは入って来なかった。ものをいいかけても黙っており、笑いかけてもこたえない漁師の子たちの群とついその崖上の西洋にあるような家、そこを出たり入ったりする自分との対照は、伸子に何となしあたりまえでない感じだった。しかし泰造も多計代も、その崖の下に駅から走って来たハイヤを停めて、髪の赤い子供らに囲まれながら、ひと騒動して出入することについて、ちっともばつの悪さは感じないらしかった。伸子はそういう場合はにかみからむっとしたような表情になった。多計代は、伸子のそういう感じかたをいらざることに思って、
「何が気の毒らしいことなんかあるもんですか。