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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
だからどんどん話して、議論して解決していらっしゃいよ。それでなくちゃいけないわ」
「うん……でも僕、あんまり何でもしゃべる奴きらいなんだ」
伸子は、身をとがめられるような内省的な眼差しになった。伸子が佃と結婚したのは、保が麹町の方にあるフランス人経営の中学校へ入学する前後のことであった。それから、離婚するまでの数年間、佐々の家は「伸子の問題」を中心に議論の絶え間がなかった。少年の保のいるのを忘れて、母と娘は互いに涙をこぼしながらいい争ったことがあった。おとなしい灰水色の制服のカラーに金糸でオリーヴの葉飾りをぬいとりした服をつけた保が、
「姉ちゃん、どうして結婚なんて、したの?」
結婚という言葉を、旅行とか病気とかいう事柄と同じような感じでいって、歎息したことがあった。もしかしたら、保は、多計代と伸子との一致点の見出せないいい合いに食傷して、何につけ議論したりすることの嫌いな若ものになったのではないだろうか。伸子は、保が、姉の生活態度のすべてに同意しているのではないことも改めて考えた。伸子が家を出てから佃が入院していたことがあった。そのとき、保が、一人で自分が咲かせた花をもって幾度か佃の見舞に行っていた。