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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
あれは、実は、私のことなんですの」
「…………」
おこった視線で、絢子はその言葉を信じかねて黙っている伸子を見つめた。
「あなたも、私のいうことをお疑いになるんですのね」
伸子は、
「ごめんなさい」
といった。
「でも――わたしは、あなたに二年も三年も会わなかったでしょう。そして、相川さんという人だってなにも直接の交友はなかったんですもの――信じる根拠も、信じない根拠も、わたしとしてはないのよ」
やせて、皮膚のあれている顎をすくうようにして、絢子はうなずいた。
「それはそうですわね」
絢子はなおひとりうなずいた。
「佐々さんは、やっぱり佐々さんらしくていらっしゃるわ……あがってよかった!」
すぐつづけて、
「でも、それは事実なんです」
と、もとの主題に戻った。伸子は困惑し、同時にいとわしかった。
「事実だとして、わたしが伺って、どうかなることなの?」
「ええ、なりますとも。あなたが私のいうことは事実だって証明して下されば、それで私は満足なんです」
相川良之介というひとは、何といろいろの角度から、いろいろの女に興味をもたれていたのだろう。多計代が示した好奇心も思いあわされた。