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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
いきなり問題の中心に飛躍して、伸子は、
「具体的に複雑なことになっているの?」
ときいた。そして、すぐつづけて念をおした。
「わたし、自分が伺いたいのじゃないのよ、だから……返事なさらないだっていいのよ――ただわたしが無作法な方が、あなたにいくらか便利かと思って……」
「ええ、ありがとう。わかりますわ」
のり子は、膝においた両手の指で小さいハンカチーフを、かたくかたく細い棒に巻きしめた。
「――具体的ですし――この頃ではもうすっかり発展の見とおしもなくなってしまって……だもんだから」
苦しくて、というところをのり子は黙って椅子の上で身をよじった。伸子は、豊田淳の書くものを思い出した。そのこった、ふくみの多い主観的な表現と、のり子の言葉のすくない風情との間には近似性がある。その趣が趣をひきつけたところから、のり子として真剣な問題がおこって、初対面の伸子にもむき合わせることになった。のり子の、ひとり苦しんでいる、という様子が伸子に、さまざまの現実を推察させた。伸子は歎息するように、
「いつも女の負担が多いのねえ」
といった。
「なんて、そうなんでしょう!」
水の中でこらえていた顔をもちあげて、一気に苦しい息をはき出すようにのり子が応じた。