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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
「愛することは、まるで苦しさに耐える、というみたい……」
「だって、それは変えなけれゃうそよ」
伸子らしい一途さでいった。
「そういうのは決して、正常じゃないわ。決して正常であり得ないわ」
佃と暮して、もがき苦しんでいた間、伸子はどんなにしばしば、いまのり子が歎いたような歎きに呻いただろう。歎いても歎いても、そのことで歎きの原因はとりのぞかれなかった。
「佐々さんの場合はわかりますわ。――ですけれど、もし、正常にする可能性がどこにもなかったとしたら? どうすればいいのかしら……」
「…………」
「正常にするためには、もとからある生活を根柢からこわさなければならないとしたら――」
「だって――それは、はじめっからわかっていることじゃないの?」
「……実際にそれが不可能だとしたら? 男のひとに、その意志がないとしたら?」
そういうのり子のまぶたの色は鉛のように沈んだ。その名をきけば一部の人々には教養の守護者のように思われている人の生活の現実も、こういういきさつとなると、凡庸さも、不決断を理由づける卑屈さも、世間の多くの男の場合とその本質では大差ないように見える。伸子は自分もその気分に染んでいないこともない教養ごのみそのものに、なまなましい嫌悪を感じた。