轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

縁側へ出て行った。

「どなたかしら……」

「いや、別に名前をいうほどの用で上ったもんでもないんですがね」

白い浴衣の人は、高くしげった夏草の穂を野原にでも立っているようにぬいて、それを指の先でまわしながら、

「あなたの書かれるものを読んでいるもんだから……」

といった。

「…………」

伸子はきくような眼でそのひとを眺めた。

「偶然通りがかって、表札を見たもんだから――」

浴衣のひとの言葉づかいやものごしが、伸子に珍しい印象を与えた。伸子の書くものを読んで、と訪ねて来た人にしては、そのひとは大人すぎて見えた。さっぱりした感じとまじってほんのすこし横柄のようでもあった。年の多さという以上に、そのひとは伸子にたいして、出来上っている自分の世界の感じを示した。伸子は静かで、おとなしく、だが、どこかふみこんだところのある人物を、警戒よりもつよい好奇心で見まもった。

庭へ立ったまま、そのひとは、縁側にいる伸子にきいた。

「あなたは、北條一雄というひとの書いた本をよんだことがありますか」

「それは――文学の本じゃないでしょう?」

伸子は、どこかの広告でその名を見た記憶があった。