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ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

「いいこと! 是非いっていらっしゃい」

独特の謙遜な態度で賛成した。

「いらっしゃれたら、本当に結構ですわ、わたしまでなんだかうれしくなっちゃった」

なっちゃった、というところを、いかにも東京ッ子らしい歯切れのいい調子で早口に云って、ウメ子は、身幅のひろすぎる借着の浴衣の中で首をすくめた。

「――伸子さんもいらっしゃるんでしょう?」

「わたしは、お金がないの」

すると素子が、幾分からんだ口ぶりで、

「金だけの問題じゃないんですよ」

と云った。

「相かわらず手がこんでるんですよ……動機がまだ熟さないんだそうだ」

「だって――それはウメ子さんは、わかって下さると思うわ。あいまいで、行くようになってしまったりするの、惜しいんですもの。度々行けるところでもないんだもの」

動機ということを云えば、名も告げない白い浴衣のひとが来て云ったことで、伸子は、自分のわからなさの凝集作用ばかり見つめていたような状態から、つきとばされて、そとへころげ出たようなところがあった。わからなさのそとに、わかるべきことが存在していて、むしろ、そっちに意味がありそうに思えるようになって来ているのであった。