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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
奥歯をかみあわせたような辛辣さで云った。
「……わたしは、ぶこに食われるのはごめんだよ」
なにかいおうとして伸子は唇をすこしあけた。けれども、なんといってよいかわからなかった。暗い素子の視線のなかには、そんなに複雑にそして本気に伸子をつきのけるかげがあった。でも――伸子は素子とのいまの生活に決してすっかり安心しているのでなかった。佃との生活におさまりきれなかったように。佃との生活に落ちつけずにいた伸子にたいして、素子はあんなに積極的に離れてゆく伸子の心を支持した。いまだって伸子は動こうとしている。自分たちの生活として、そして、自分たちの生活の新しい意味を発見しかかっている。素子は、なぜ同感してくれないのだろう。伸子と素子との間のことのようにうけとるのだろう。素子の机のよこからはなれてゆきながら伸子は涙ぐんだ。
二十四
ソヴェト同盟の革命十周年記念祭は十月初旬から一ヵ月の間つづく予定だった。それがすんでから、あっちへ着く方がいい。素子はそういう風に計画を立てた。全く個人の資格で、もしかしたら招かれざる客としてゆく女なんかは、そういう騒ぎがしずまってからの方がいい。