轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ふたつのにわ

二つの庭

宮本 百合子

「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页

青空文庫

そういう考えであった。

九月に入って、素子は本式に旅券の申請手続をとることになった。旅券申請には、下附される旅券にはる写真が入用ということだった。

「厄介だな。うちでとったのだっていいんだろう。何かありそうなもんだね」

素子は、台紙にはらないスナップ写真を入れてあるカステーラの古箱を床の間の地袋からもち出して、なかみを机の上にひっくりかえしはじめた。伸子は縁側の椅子のところからその様子を眺めていた。素子は、

「丁度っていうのはないもんだな、これは小さすぎるし」

書類につけて出す写真は寸法もきまっているのであった。伸子は、妙に力のこもった眼つきをして素子が素人写真をいじっている様子を見まもっていたが、やがて、少しつばのたまったような声になって、

「――あたらしくとったら?」

そういいながら椅子を立って、机のわきへ来た。

「新しくとりましょうよ、かわりばんこに……」

ばつがわるそうにそう言って伸子はちらりと亢奮した笑顔をした。

「わたしもいるから……」

素子は、それをきくとさっと顔をあからめた。

「なんだ! ぶこちゃん!」

そして、たしかめるように、じろじろと伸子を見まわした。