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ふたつのにわ
二つの庭
宮本 百合子
「中央公論」1947(昭和22)年1、3~9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 195,492 字 · 389 页
稽古がすんだ部屋へ伸子がお茶をもって行くと、素子がいつもの赤く透きとおるパイプをくわえながら、
「なるほどね、そういえば本当にそうだ」
面白そうに笑った。
「なんなの?」
「浅原さんがね、ワーリャさんの眼は、ほかの外国人の眼とちがって、じっと見ていても変になって来ない、っていうのさ」
「変になって来るって……」
伸子はよく意味がのみこめなくて、
「どういう風に?」
ときいた。蕗子は、ふっくりした小さい口元でなかば笑いながら、
「あんまり碧い眼を見ているうちに、段々その人が何を考えているのか分らないようになるでしょう? 溶けるみたいになって。でも、この間はじめてお目にかかったワーリャさんの眼は私たちの目とあまりちがわないみたいで、わけがわかったから」
「本当に! そういえば、ミス・ドリスだって、眼だけ見つめていたら、何がなんだかわからなくなって来るわ」
ミス・ドリスは蕗子のいる専門学校の英語の女教師で、人望があった。その人は、黄色っぽい髪に水色がかった菫色の瞳をしていた。
「フィリッポフさんの眼だって、そうだわ」
「あれゃ、色のせいじゃない」
断定的に素子がいったので、蕗子も伸子も笑い出した。