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ふたつのぶんがくろん

二つの文学論

平林 初之輔

「東京朝日新聞」1929(昭和4)年1月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 1,666 字 · 4 页

青空文庫

ごく最近に私は二つの文学論を読んだ。一つはドイツのマルクス主義者フランツ・メーリングの文学論を川口浩氏が編訳した「世界文学と無産階級」という書物で、いま一つは、イギリスでショーと並び称せられた特色ある批評家チェスタトンの「探偵小説擁護論」(『新青年』所載)である。

前者の巻頭の「芸術とプロレタリアート」という論文の一節に「現代芸術が非常に悲観的な特徴をもっているのに反し、近代のプロレタリアートは非常に楽観的な特徴をもっている」という一句がある。現代の芸術が悲観的であるのは、彼によれば、例えばそれが「好んで描く貧困からの出道を知らない。現代芸術にぜんぜん欠如しているところのものは階級意識ある労働者にとって生命中の生命である、かの喜ばしき闘争要素である」

この間題はかつてプロレタリア文学における明るさの問題として、日本でも論じられたはずであるし、現在でも、悲観派と楽観派、暗黒派と光明派、現実派と理想派との対立となって存続している。そして最近には、生田長江氏の左翼の諸作品に対して加えた批評とそれに対する片岡鉄兵氏の駁論(ともに『読売新聞』所載)および川端康成氏の『文藝春秋』