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ふたりいるとき
二人いるとき
宮本 百合子
「新女苑」1938(昭和13)年1月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 8,672 字 · 18 页
この頃はいつ召集があるかもしれないような事情のなかで、自分たちが本気でそれを守り高めようとして暮している夫婦生活の平凡な真面目さが、何かに嘲弄されているような嫌な気もするのであった。
北向きの三畳が多喜子の家では仕事部屋になっていて、東の高窓際にミシンがおかれ、仕事テーブル、アイロン台と、順に低い一間の明り窓に沿って並んでいる。赤い三徳火鉢に炭団を埋めたのを足煖炉代りにして、多喜子はもって帰った尚子の仮縫いの服の仕事をしていたのであったが、暫くするとそれをやめてテーブルへ置いた。重くてつるつるとしたその絹服の感触が幸治たちの生活の感覚をひっぱっているようで、いじっている気がしなくなったのであった。
多喜子は腕時計を見て、椅子をおり、台所からもう一つ同じような三徳をもって来た。茶の間の火鉢からおこっている炭団をうつしていると、格子の鈴が鳴って、
「いらっしゃる? あがってよくって?」
カタ、カタと足からぬがれて三和土に落ちる左右の靴の踵の音をさせて、好子が入って来た。
「――小枝子さんもまだだったの? 私おそくなったと思っていそいで来たんだけれど……」