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ふたりのもうじん
二人の盲人
平林 初之輔
「祖国 第三巻第一二号」1930(昭和5)年12月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 6,366 字 · 13 页
はげしい興奮と、懊悩とに、全精力を使い尽くしてしまった彼が、こうした寒い夜に、持病の発作を起こしたのは当然だった。眼に見えない力が、彼の咽喉を、これでもかこれでもかと締めつける。針の孔ほどの狭い隙間から出入りする呼吸は、喉頭部の粘膜に摩擦して、ひいひいと音をたてた。
千鶴子は、いつものように、心を尽くして病人をいたわった。だが、彼には、彼女のしぐさが、いちいちわざとらしく思われた。彼女が親切にすればするほど、彼には、彼女が藤木との関係を、ごまかすための手段だと思われた。それは、もはや顔色に出るのを隠すことが、できなくなってしまった。それでも、千鶴子は、もちろんそんなことには、気がつかなかった。ただ、住み馴れた家を追い立てられることの淋しさが、彼を気むずかしくさせるのだとばかり思っていた。
――そうだ。そうだ――と彼は考えた。――俺は、醜い盲人だ。おまけによぼよぼの喘息病みだ。千鶴子は人並み勝れて美しいということだ。彼女が、こんな片輪の俺に、満足しているわけはない。俺と藤木と、並んで座っているところを、比べてみたら、俺に愛想がつきるのはあたりまえだ。