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ふたりまちやっこ

二人町奴

国枝 史郎

「少年倶楽部」1927(昭和2)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,555 字 · 19 页

青空文庫

6

畳へ押し付けた額を上げると、藤兵衛云い出したものである。

「長兵衛は男にございます。それに反して、水野様は、卑怯なお侍にござります」

グッとばかりに唾を呑んだが、

「天下のお政治と申すものは、公平をもって第一とする、かよう承わって居りましたところ男の長兵衛が犬死をし、卑怯者の水野殿は、お咎なし! 伊豆守様!」

凄まじい眼、臆せず伊豆守を睨みつけた。

「御身ご老中でおわしながら、それでよろしゅうござりましょうか! さあご返答! お聞かせ下され!」

なんと云う大胆、なんという覇気、将軍の面前老中を前にこれだけのことを云ったのである。

「うむ」とは云ったが伊豆守、なんと返答したものか当惑したように黙ってしまった。

と、その時一人の近習、伊豆守の側へ進み寄ったが何やら伊豆守へ囁いたらしい。

「は」と言うと伊豆守、一つ頷くと微笑した。

「藤兵衛」と呼んだが愛嬌がよい。

「町奴の勇ましい心意気、上様にも悉くお喜びであるぞ。ついては」と云うと居住居を正し、

「上様御諚、町奴としての、何か放れ業を致すよう」

こいつを聞くと緋鯉の藤兵衛、さも嬉しそうに言上した。

「お庭拝借致しまして、町奴に似つかわしい放れ業、致しますでござります」