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ふたりまちやっこ

二人町奴

国枝 史郎

「少年倶楽部」1927(昭和2)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,555 字 · 19 页

青空文庫

1

「それ喧嘩だ」

「浪人組同志だ」

「あぶないあぶない、逃げろ逃げろ」

ワーッと群衆なだれを打ち、一時に左右へ開いたが、遠巻きにして眺めている。

浪人組の頭深見十左衛門、その子息の十三郎、これが一方の喧嘩頭、従うもの二三十人、いずれも武道鍛練の、度胸の据わった連中である。

その相手は土岐与左衛門と、その一味の浪人組、その数およそ三四十人。

おりから春、桜花の盛り、所は浅草観世音境内、その頃にあっても江戸一の盛り場、しかも真昼で人出多く、賑わいを極めている時であった。

「あいや土岐氏」と十三郎、ヌッとばかりに進み出た。

年この時二十八歳、色白く美男である。その剣道は一刀流、免許の腕を備えている。

「過日我らが組下の一人、諸戸新吾と申す者、貴殿の部下たる矢部藤十殿に、鞘当てのことより意趣となり、双方果し合い致したるところ、卑怯にも矢部殿には数人を語らい、諸戸新吾を打ち挫き、恥辱を、与えなされたため、諸戸は無念を書き残し、数日前に腹切ってござる。以来我ら貴殿に対し、矢部殿お引き渡し下さるよう、再三使いをもって申し入れましたが、今になんのご返事もない。組下の恥辱は頭の恥辱、今日ここで偶然お目にかかった以上、貴殿を相手にこの十三郎単身お掛け合い致しとうござる。