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にじゅういち
二十一
「現代文学 第六巻第九号」1943(昭和18)年8月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,877 字 · 21 页
けれども僕は孤独になっては地獄だから、そこで婆さんと話しこむ。この婆さんの娘はさる高名な占師(これが兄弟の叔父さんだ)の妾であったが、若死して、婆さんは三十円の捨扶持で占師に余世の保証を受けていた。徳川家康の顔を女に仕立てたようなふとった婆さんは、死んだ娘のこと及びそれにからまる占師のこと以外に喋らず、しかも僕が一言半句口をさしはさむ余地もない大変なお喋りだ。僕の毎晩の訪れに大喜び、娘の生い立から死に至るまで同じことを繰返しきかされたけれども、ひとつも耳に残っておらぬ。こうして毎晩修三兄弟の不在がつづき婆さんと僕二人だけで深夜まで話しこむ習慣がつくと、婆さんは僕を大いに頼もしがり、グチから転じて三百代言のようなことを頼まれた。婆さんは占師から月々三十円の生活費をもらっていたが、修三兄弟と一緒の生活を命じられて以来、一文の金も受取らぬ。女中だって只の筈はないわけで、こういう不良青年兄弟の世話をやらされたあげく、従来の生活費まで体よく中止されては話にならぬ。生活費をくれないわけはないので、兄弟が消費しているに相違ないから、占師に会ってこのことを確かめてくれないか、というのである。