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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
「でも、怪我するといかんさかい」
「あら、どうして。旅行すると、風邪ひいたり怪我したりするんなら、だれもいけないわ」
「みんな、やめたらええ」
「わあ、お話にならん」
先生はにが笑いをした。
「先生、ぼくはもう、金毘羅さんやこい、うちの網船で、三べんもいったから、いきません」
森岡正がそういってきた。
「あらそう。でもみんなといくの、はじめてでしょう。いきなさいよ。あんたは網元だからこれからだって毎年いくでしょうがね。先生いっとくから。修学旅行の金毘羅まいりが一ばんおもしろかった、とあとできっと思いますからね」
加部小ツルは、じぶんも行かないといいながら、やはり行かない木下富士子のことを、こんなふうにいった。
「せんせ、富士子さん家、借銭が山のようにあって旅行どころじゃないん。あんな大きな家でも、もうすぐ借銭のかたにとられてしまうん。家ん中、もう、なんちゃ売るもんもないんで」
「そんなこと、いわんものよ」
かるく背中をたたくと、小ツルはぺろっと舌を出す。
「いやな子!」
そういいながら思いだすのは富士子の家だった。はじめて岬へ赴任したときでも、もう明日にも人手に渡りそうな噂だったその家は、蔵の白壁が北側だけごっそりはげていた。