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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
七 羽ばたき
「大阪へいったんじゃなかったの。マッちゃん、ずっとここにいたの?」
のぞきこまれて松江はやっと思いだしでもしたように、しくしく泣きだした。思わずその肩をかかえるようにして縄のれんの外につれ出すと、奥からあわただしい下駄の音といっしょに、おかみさんもとびだしてきた。
「どなたですか、だまってつれ出されたら、こまりますが」
うさんくさそうにいうのへ、松江ははじめて口をきき、おかみさんのうたがいを打ち消すように小声でいった。
「大石先生やないか、お母はん」
うどんはとうとう食べるひまがなかった。
七 羽ばたき
修学旅行から大石先生の健康はつまずいたようだった。三学期にはいってまもなくのこと、二十日近く学校を休んでいる大石先生の枕もとへ、ある朝一通のはがきがとどいた。
拝啓、先生の御病気はいかがですか。私は毎日、朝礼の時になると、心配になります。大石先生がいないとせえがないと、小ツルさんや富士子さんもいっています。男子もそういっています。先生、早くよくなって、早くきてください。岬組はみんな心配しています。小夜奈良。
岬組の生徒たちの真情にふれた思いで、ふと涙ぐんだ先生も、最後の小夜奈良で、思わずふきだした。