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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

学校でも生徒たちは大さわぎだった。職員室の入り口のわきに置いた自転車をとりまいて、五十人たらずの生徒は、がやがや、わやわや、まるで雀のけんかだった。そのくせ女先生が話しかけようとして近づくと、やっぱり雀のようにぱあっと散ってしまう。しかたなく職員室にもどると、たったひとりの同僚の男先生は、じつにそっけない顔でだまっている。まるでそれは、話しかけられるのは困りますとでもいっているふうに、机の上の担当箱のかげにうつむきこんで、なにか書類を見ているのだ。授業のうちあわせなどは、きのう小林先生との事務ひきつぎですんでいるので、もうことさら用事はないのだが、それにしてもあんまり、そっけなさすぎると、女先生は不平だったらしい。しかし、男先生は男先生で、困っていたのだ。

――こまったな。女学校の師範科を出た正教員のぱりぱりは、芋女出え出えの半人前の先生とは、だいぶようすがちがうぞ。からだこそ小さいが、頭もよいらしい。話があうかな。昨日、洋服をきてきたので、だいぶハイカラさんだとは思っていたが、自転車にのってくるとは思わなんだ。困ったな。なんで今年にかぎって、こんな上等を岬へよこしたんだろう。