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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
兵隊までつとめたら、番頭になれるといいました」
さっきから磯吉はずっと、よそゆきのことばで固くなっている。それをほぐすように、
「いい番頭さんになりなさいね。ときどき先生にお手紙くださいね。きのう、小ツやんに写真ことづけたでしょ。あのときのこと思いだして」
竹一も磯吉も笑った。
「これ、おせんべつ、はがきと切手なの」
もらいものの切手帖とはがきを新らしいタオルにそえて包んだのを磯吉に渡し、竹一にはノート二冊と鉛筆一ダースを祝った。
「藪入りなんかでもどったときには、きっといらっしゃいね。先生、みんなの大きくなるのが見たいんだから。なんしろ、あんたたちは先生の教えはじめの、そして教えじまいの生徒だもん。仲よくしましょうね」
「はい」
磯吉だけが返事をした。
「竹一さんもよ」
「はい」
村のはずれの曲がり角にバスの姿が見えると、磯吉はもういちど帽子をとっていった。
「せんせ、ながながお世話になりました。そんなら、ごきげんよろしゅ」
いかにも、それは鸚鵡のようなぎごちなさだった。いいおわるとすぐ帽子をかぶった。大人ものらしい鳥打帽は漫画のこどものようではあったが、似合っていた。