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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
「それで、嘉吉つぁんの嫁さんは、おたっしゃかな」
「はあ、おかげさまで」
と、いったが、年とった母が、嫁さんと呼ばれたことで思わず笑顔になった。帰ればまずそれを母にいおうと思った。ちょうど上りバスが警笛とともに近づいてきた。上り客でないことをしめすように、急いで標識からはなれたが、バスは止まった。茶店の軒下に立って、おりる客の顔を、見るともなく見ていた。バスはすし詰めの満員で、おりてくるのは若い男ばかりだった。ほとんどみな、ここでおりるかと思うばかり、つぎからつぎへと出口にあらわれる若い顔をみているうち、ふと思いだしたのは、今日この町の公会堂で徴兵検査がとりおこなわれることだった。ああ、それかと思いながら、若さにみちた個々の顔につぎからつぎへと目をうつしていた。
「あっ、小石先生!」
思わずとびあがるほどの大声だった。ほとんど同時に先生も叫んだ。さそわれるような大声で、
「あらっ、仁太さん!」
そして、あとからあとからとつづいて出てくる顔に向かって、
「あら あら あら みんないるの、まあ」
仁太につづいて磯吉、竹一、正、吉次と、かつての岬の少年たちはみんなそろった。