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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
天皇の名によって宣戦布告された十二月八日のそのずっとまえに、その年の入営者である仁太や吉次や磯吉たちは、もうすでに村にはいなかった。出発の日、いくばくかの餞別にそえて大石先生は、かつての日の写真をハガキ大に再製してもらっておくった。もう原板はなくなっていた。竹一のほかはみななくしていたので、よろこばれた。
「からだを、大事にしてね」
そして、いちだんと声をひそめ、
「名誉の戦死など、しなさんな。生きてもどってくるのよ」
すると、聞いたものはまるで写真の昔にもどったような素直さになり、磯吉などひそかに涙ぐんでいた。竹一はそっと横を向いて頭をさげた。吉次はだまってうつむいた。正はかげのある笑顔をみせてうなずいた。仁太がひとり声に出して、
「先生だいじょうぶ、勝ってもどってくる」
それとて、仁太としてはひそめた声で「もどってくる」というのをあたりをはばかるようにいった。もどるなどということは、もう考えてはならなくなっていたのだ。仁太はしかし、ほんとにそう思っていたのだろうか。まっ正直な彼には、おていさいや、ことばのふくみは通用しなかったからだ。仁太だとて命の惜しさについては、人後におちるはずがない。