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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

しかしミサ子のほうは、さすがにあっさりと生地をみせ、なつかしそうにいった。

「先生がまた岬へおいでるというのを聞いて、わたし、うれしくて涙が出ましたの。母子二代ですもの。こんなこと、めずらしいですわ、ほんとに。でも先生、お達者で、よろしかったこと」

「おかげさまで。でも、みんな、いろんな苦労をくぐりましたね」

それには答えず、あたりを見まわしながら、ミサ子は、

「先生が怪我をしたところ、ここらへんでしたかしらん?」

なつかしそうな目をしていった。

「そう、でしたね。よく思いだしてくれたこと」

「そりゃあ忘れませんわ。ときどき思いだしては早苗さんと話していたんですもの。わたしらのクラスは、岬に学校がひらかれていらいの変わりものの寄り集まりらしいって。ほら、あのとき、先生とこまで歩いていったりして」

そういいながら、はるかな一本松に目をやり、ちょうど近づいてきた大吉の舟を、けげんな顔でながめた。舟はもう目の前にその姿を見せていたのだ。そのほうを、顔をふってしめしながら、大石先生は笑顔でいった。

「ミサ子さん、あれ、わたしの息子ですよ。ああして毎日、わたしを迎えにきてくれますの」