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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
「ちょっとお母さん、この方に、お話があるの。だから、そのあいだだけ待って」
大吉はおこったような顔をして、だまって浜にとびおりた。大きな石にとも綱をとるのをまって、
「大吉も、ここへおいで」
大吉もいる前で、ミサ子に自転車の話をききたいと考えたのだが、もうそのことは忘れたような顔をしているミサ子と、大人っぽく膝をだいて沖を見ている大吉とにはさまれて坐ると、どうしたのか自転車のことは口に出したくなくなった。どんな方法がミサ子にあるというのか。いずれは、おたがいの心をよごすほかに道がないことがわかるように思えたからだ。重くるしくだまっていると、それをほごすように、ミサ子は気がるに話しだした。
「早苗さんと、こないだ話したんですけど、わたしらのクラスだけで、先生の歓迎会をしようかって」
「まあうれしいこと。でも、歓迎していただくほど、わたしが役だちますかどうか。ここへくるまでは、昔のまま元気なつもりでしたのにね、きてみると泣けて泣けて。泣けることばかりが思いだされましてね……」
そういってもう涙ぐんでいる先生だった。それをいそいでぬぐい、思いさだめたようすを声のひびきにこめて、