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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
おだやかな入り海はいかにも夏らしくぎらぎら光って、母のいる一本松の村は白い夏雲の下にかすんで見えた。あけっぴろげの窓から、海風が流れこんできて、もうあと二日で夏休みになるよろこびが、からだじゅうにしみこむような気がした。だが、少し悲しいのは、なんとしても気をゆるさぬような村の人たちのことだ。それを男先生にこぼすと、男先生は奥歯のない口を大きくあけて笑い、
「そりゃあ無理な注文じゃ。あんたが、なんぼ熱心に家庭訪問してもですな、洋服と自転車がじゃましとりますワ。ちっとばかりまぶしくて、気がおけるんです。そんな村ですからな」
女先生はびっくりしてしまった。顔を赤らめ、うつむいて考えこんだ。
――着物きて、歩いてかよえというのかしら。往復四里(十六キロ)の道を……。
夏休み中にもなんどかそれについて考えたが、決心のつかぬうちに二学期がきた。暦のうえでは九月といっても、永い休みのあとだけに暑さは暑さ以上にこたえ、女先生の小さなからだは少しやせて、顔色もよくなかった。その朝家を出かけるとき、先生のお母さんはいったのである。
「なんじゃかんじゃというても、三分の一は過ぎたでないか。