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にじゅうしのひとみ

二十四の瞳

壺井 栄

「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日

N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页

青空文庫

男先生はあわてて手水をつかっているどころでなく、はだしになって働いている。奥さんは七輪などとっくにすまして、きりりとしたたすきがけで働いているではないか。

ああ、二学期第一日は出発からまちがっていた、と女先生はひそかに考えた。家を出るときの、お母さんにたいしてのぶあいそを悔いたのである。三時間目の唱歌のとき、女先生は思いついて、生徒をつれ、災難をうけた家へお見舞いにゆくことにした。いちばん学校に近い西口ミサ子の家へより、見舞いのことばをのべた。なんといっても家がぺっちゃんこになったソンキの家が被害の第一番だとみんながいうので、つぎには荒神様の上にあるソンキの家へむかった。マスノが今朝いった、蟹をたたきつけたようだというのを思いだし、それは大人の口まねだろうと思いながら、へんに実感をともなって想像された。だが家はもう近所の人たちの手だすけであらかた片づいていた。別棟の豆腐納屋のほうが助かったので、そこの土間にじかに畳をいれて、そこへ家財道具をはこんでいた。一家七人が今夜からそこに寝るのかと思うと、気のどくさですぐにはことばも出ないでいるのを、手つだい人のなかから川本松江の父親が口をだし、大工らしいひょうきんさで、しかしいくぶんかの皮肉をまじえていった。