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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
「おなご先生も、えらい苦労かけますな」
「うん。しかし、むこうにすりゃあ、もっと苦労じゃろうて」
「そうですとも、あんたのオルガンどころじゃありませんわ。足一本折られたんですもん」
「もしかしたら、大石先生はもう、もどってこんかもしれんぞ。先生よりも、あの母親のほうが、えらいけんまくだったもんな。かけがえのない娘ですさかい、二度とふたたび、そんな性わるの村へは、もうやりとうありません、いうてな」
「そうでしょうな。しかし、こられんならこられんで、代りの先生がきてくれんと困りますな」
人にきかれたら困るとでもいうようにないしょ声でいって、うらめしそうに、ちらりと海のむこうを見た。一本松の村も静かにねむっているらしく、星くずのような遠い灯がかすかにまたたいている。こんな夜ふけに、こんな苦労をしているのはじぶんたちだけだと思うと、女先生がうらめしかった。
あれ以来、奥さんもまたひと役かって、四年生五人の裁縫をうけもっていたのだ。しかし、雑巾さしの裁縫はちっとも苦労ではなかった。まるで手まりでもかがるように、ていねいにさすのを、一時間のあいだ、かわるがわるにみてやればそれですむ。