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にじゅうしのひとみ
二十四の瞳
壺井 栄
「ニューエイジ」1952(昭和27)年2月1日~11月1日
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 113,429 字 · 227 页
泣きたいものは、なんぼでも泣け泣け」
古ぐつの上ばきをぱっく ぱっく音させて男先生が去りかけると、はじめてみんなは笑いだした。泣け泣けといわれたのがおかしかったのだ。
始業の板木が鳴りわたり、いよいよ今日の勉強もはじまるわけだ。そのはじめに別れのあいさつをして帰るはずの大石先生であったが、別れのことばをいったあと、なにかに引っぱられるようにして、一、二年の教室へはいった。久しぶりの女先生に、みんなうきうきした。
「じゃあ、この時間だけ、いっしょにべんきょうしてお別れにしましょうね。算数だけど、ほかのことでもいいわ。なにしよう?」
はい はい と手があがり、まだ名ざしをしないうちにマスノが、
「唱歌」
と叫んだ。歓声と拍手がおこった。みんなさんせいらしい。
「浜で歌うたう」
わあっと、また、ときの声があがる。
「せんせ、浜で歌うたう」
マスノがひとりで音頭をとっている。
「じゃあ、男先生にそいって、浜まで送ってきてね。船がまってるから」
パチパチと拍手がおこり、机ががたがた鳴った。男先生に相談すると、それならみんなで送ろうということになった。びっこの大石先生をとりまくようにして十二人の一年生が先頭を歩いた。