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ごえもんとしんざ

五右衛門と新左

国枝 史郎

「大衆文芸 第一巻第一号」1926(大正15)年1月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,405 字 · 21 页

青空文庫

陰々滅々静かであった。

と、呼ぶ声が聞えて来た。

「殿下! 殿下! 在しませぬかな!」

「応」と我知らず答えようとした途端、

「……世に盗賊の種は尽きまじ」と、曽呂利新左衛門が大声で呼んだ。「五右衛門、上の句を付けてくれ!」

すると隣室から笑う声がした。

「うむ、新左か、新左がいたのか! アッハハハ、そうであったか。……石川や浜の真砂は尽くるとも。……沙阿弥! 沙阿弥! 沙阿弥はいぬか!」

お坊主沙阿弥は迂濶りと、「ヘーイ」と大きな返辞をした。と、スルスルと沙阿弥の体は、隣の部屋まで引き出されて行った。

が、その後は何事も無かった。沙阿弥の死骸はその翌日、泉水の畔で見出された。

七

秀吉暗殺の壮図破れ、面目を失った五右衛門は、秀次の許を浪人! ふたたび剽盗の群へ這入った。

秀次が高野山で自尽した後、しばらくあって五右衛門も、新左衛門の手で捕えられた。

千鳥の香爐の啼音に驚き、仙石権兵衛の足を踏み、法術破れて捕えられたのでは無い。

瓜一つのために捕えられたのであった。

京師警備の任にあった、徳善院前田玄以法師が、或る日数人の従者を連れ、大原野を散歩した。