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ごかいのまど
五階の窓
江戸川 乱歩
01 合作の一(発端)
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,189 字 · 21 页
よっぽどこっそりと上って行ったものに相違ない」
「なる程、そう云えばあいつは確かに怪しい。大あわてで逃げ出して行ったからね」
それから二人は、何度もコーヒーのお代りを命じて、長い間話し合った。それからそれへと犯罪談は尽きなかった。冬の夜はいつしか更けて、彼等がカフェを出たのは、もう九時を過ぎていた。
これは大正十五年『新青年』に連載した合作小説の発端です。このあとを順に平林、森下、甲賀、國枝、小酒井の諸氏が書きつがれて完結した訳です。
千変万化の曲折があって、様々の人物に嫌疑がかかります。瀬川タイピストや北川庶務係は勿論、瀬川に恋していた野田もきわどい一役を演じています。エレベーターから飛出して行った男は瀬川タイピストの実の兄で、兼ねて労働争議の張本人であり、無論最後まで残った濃厚な嫌疑者です。
ところが小酒井氏担当の完結篇は実に意外な結末を見せました。犯人はなかったのです。殺人罪は犯されなかったのです。西村社長は当時事業上非常な苦境にあり、五万円の贋造紙幣を買入れたりした程で(折鞄の中の二千円もその贋造紙幣でした)煩悶に煩悶を重ねていた所へ、争議が起り、黒マントの人物が侵入して来たりして、心痛の極一時的狂気の発作を起し、窓から飛降りる様なことになったのです。