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きょうかのこむすめどうじょうじ

京鹿子娘道成寺

酒井 嘉七

「探偵春秋 第二巻第六号」春秋社、1937(昭和12)年6月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,841 字 · 49 页

青空文庫

を、舞台にお聞きしたいからでもございました。何分にも、あの興行は序幕が「今様四季三番叟」通称「さらし三番叟」というもので、岩井半四郎が二の宮の役で勤めますのと、一番目には、(いせみやげ)川崎踊拍子、二番目狂言には、「恋桜反魂香」――つまり、お七が、吉三の絵姿をくと、煙の中に吉三が姿を現わして、所作になる――という、あの「傾城浅間嶽」を翻あんしたもの――そして、つづく大切が「京鹿子娘道成寺」で、役割は、白拍子に岩井半四郎、ワキ僧が尾上梅三郎に、瀬川吉次、長唄は松島三郎治、坂田兵一郎、三味線は、お師匠の杵屋新次さまに、お弟子の新三郎、その他の方々、お囃子連中は藤島社中の方々――と、こういったあんばいで、どの幕も、凝りにこった出し物――どれに優劣をつけると申す訳にも参らないほどでございました。が、なんと申しましても人気の焦点は、大切の娘道成寺でございました。それと申しますのも、この所作をお踊りになる、岩井半四郎が、自他ともにゆるした、日本一の踊り手というのでございますから、この土地の、お芝居ずきの方々には、それこそ、どうにでもして、出かけねばならないお芝居でございました。