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きょうかのこむすめどうじょうじ
京鹿子娘道成寺
酒井 嘉七
「探偵春秋 第二巻第六号」春秋社、1937(昭和12)年6月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 24,841 字 · 49 页
幕のあいた最初から、殺人の発見まで、
(い)の新次師匠は十二三間も、
(ろ)の新三郎さまは四五間も、
(は)の名見崎東三郎さまは、後見でございますから、比較的接近していられましたものの、一間あまりは、最後に、鐘が上りますまで、ずっと、離れていらっしたのでございます。そういたしますれば、いまも、申しましたように――このお三方に嫌疑がかかるとすれば――あの造りものの鐘から、近くは、五六間、遠くて、十間から二十間も離れずに、この絢爛たる踊りの舞台をご見物になっていた、観客の方々にも、同じ程度の嫌疑を、おかけするのが当然でございましょう。しかし、それにいたしましても、衆人環視の、歌舞伎の舞台でそれも、造りものの鐘の中で、姿なき者の手によって遂行されて殺人現場に残された物的証拠は、象牙の撥、ただの一本。と、かように申しますれば、この事件が、いまだ、はっきりと解決されずに残されているのも、故あることとお考えになるでございましょう。
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その筋の方々も、この事件には、すっかり、お困りになったご様子でございました。一座の方々、長唄、鳴物、囃子のご連中から、道具方の皆様がたまで、ひと通りのお取調べがあったようでございまして、そのはてには、楽屋の入口で、下足番のような仕事をいたしております親爺の方にまで、色々な