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ひとをのろわば

人を呪わば

国枝 史郎

「探偵趣味」1926(大正15)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 3,223 字 · 7 页

青空文庫

「おや、お君ちゃんは居ないのかい」勝手の違ったトボケた声。

「ええ、今夜は妾なのよ」

「ははあ此部屋は出張所なのか」

「ハイカラに有仰いよ、倶楽部かってね」

「ああ成程、私娼倶楽部か」

記者としては詩人に過ぎ、詩人にしては記者に過ぎる、不幸な美的記者の一條氏、倶楽部という言葉が気に入ったらしい。

「お君ちゃんが居ないなら失敬するよ」

「あら、妾では気に入らないの」

「なあに君の方が可いんだが。……」

よくないのは持ち合わせらしい。

「貴郎、新聞社の方でしょう?」

「ははあ、お君ちゃんが話したな」

「ええ然うよ、詳しくね。……でもよく助けて上げたわね。……妾、お君ちゃんと親友なのよ。……お礼心よ、泊っていらっしゃい」

友情掬す可きものがある。

何んの一條がかぶりを振ろう。

で、二人幸福になる。

雀が啼いて朝になる。

「今朝は早く帰らなけりゃあならない」

「せめて夕方までいらっしゃいよ」

不安乍らも居ることにする。

チリンチリンと夕刊の鈴。

一條女をして夕刊を買わせる。

一号活字。三段抜。

「西警察署の大捕物」

どんなに悄気たって追っ付かない。

つづけて二度も出し抜かれては。