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じんせいあんない

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坂口 安吾

「キング 第三〇巻第一一号」1954(昭和29)年9月1日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,201 字 · 21 页

青空文庫

「分らねえ人だね。そのウチワを動かすのや蒸しタオルをしぼるのがオレという人間だから、ここが人間の値打なんだ。一生ケンメイにそういう値打のあることをやるから戻ってくれとこういうワケだ。分ったろう」

「人間の値打は働いて女房子供を安楽に養うことだよ。ミミズはさッさと戻んな。もう二度と来ないでおくれ」

お竹は席を蹴って立つ。障子の外で様子をうかがっていたお竹の仲間たちがたまりかねてドッと笑いだす。これ以上長居ができないから虎二郎は子供の手をひいて空しく戻った。

その後も何回となく料理店を訪ねたが、お竹は会ってくれない。自分ではダメだから友人で役場の代書をやっている弁説も立ち法律にも通じている彦作にたのんで代理に心をきいてもらッたが、ウチワや蒸しタオルと同棲するのはイヤだし、ましてミミズと同棲するのはもう我慢ができない。自分の同棲したいのは立派に妻子を養う人間とだけだという立派な返事である。彦作はことごとく敬服して戻った。さっそく虎二郎に向って、

「イヤ、お竹さんの云うのは尤も千万だ。キミの方がどうしてもよろしくない。働いて妻子を養わなくちゃア男じゃない」

「いまは失業時代で口がないから仕方がない」