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じんせいろんノート
人生論ノート
三木 清
下記以外「文學界」文藝春秋社、1938(昭和13)年6月~1941(昭和16)年10月<br>個性について「哲學研究 第五十二號 第五卷 第七册」京都哲學會、寶文館、1920(大正9)年7月1日<br>後記「人生論ノート」創元社、1941(昭和16)年8月11日<br>旅について 不詳
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噂について
しかし真の思想家はまた絶えず瞑想の誘惑と戦っている。
ひとは書きながら、もしくは書くことによって思索することができる。しかし瞑想はそうではない。瞑想はいわば精神の休日である。そして精神には仕事と同様、閑暇が必要である。余りに多く書くことも全く書かぬことも共に精神にとって有害である。
哲学的文章におけるパウゼというものは瞑想である。思想のスタイルは主として瞑想的なものに依存している。瞑想がリズムであるとすれば、思索はタクトである。
瞑想の甘さのうちには多かれ少かれつねにエロス的なものがある。
思索が瞑想においてあることは、精神が身体においてあるのと同様である。
瞑想は思想的人間のいわば原罪である。瞑想のうちに、従ってまたミスティシズムのうちに救済があると考えることは、異端である。宗教的人間にとってと同様に、思想的人間にとっても、救済は本来ただ言葉において与えられる。
噂について
噂は不安定なもの、不確定なものである。しかも自分では手の下しようもないものである。我々はこの不安定なもの、不確定なものに取り巻かれながら生きてゆくのほかない。
しからば噂は我々にとって運命の如きものであろうか。