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じんせいろんノート

人生論ノート

三木 清

下記以外「文學界」文藝春秋社、1938(昭和13)年6月~1941(昭和16)年10月<br>個性について「哲學研究 第五十二號 第五卷 第七册」京都哲學會、寶文館、1920(大正9)年7月1日<br>後記「人生論ノート」創元社、1941(昭和16)年8月11日<br>旅について 不詳

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 71,023 字 · 143 页

青空文庫

名誉心について

である。すべての虚栄はこの半分の徳のために許されている。虚栄を排することはそれ自身ひとつの虚栄であり得るのみでなく、心のやさしさの敵である傲慢に堕していることがしばしばである。

その理想国から芸術家を追放しようとしたプラトンには一つの智慧がある。しかし自己の生活について真の芸術家であるということは、人間の立場において虚栄を駆逐するための最高のものである。

虚栄は生活において創造から区別されるディレッタンティズムである。虚栄を芸術におけるディレッタンティズムに比して考える者は、虚栄の適切な処理法を発見し得るであろう。

名誉心について

名誉心と虚栄心とほど混同され易いものはない。しかも両者ほど区別の必要なものはない。この二つのものを区別することが人生についての智慧の少くとも半分であるとさえいうことができるであろう。名誉心が虚栄心と誤解されることは甚だ多い、しかしまた名誉心は極めて容易に虚栄心に変ずるものである。個々の場合について両者を区別するには良い眼をもたねばならぬ。

人生に対してどんなに厳格な人間も名誉心を抛棄しないであろう。ストイックというのはむしろ名誉心と虚栄心とを区別して、後者に誘惑されない者のことである。