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じんぞうにんげんエフし

人造人間エフ氏

海野 十三

「ラヂオ子供のテキスト」日本放送協会出版、1939(昭和14)年1月~12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,879 字 · 109 页

青空文庫

博士はきっと恐ろしい人だとおもうわ。兄ちゃんは、あの部屋で、博士となにをしていらしたの」

「人造人間エフ氏という骨組だけしかできていない人造人間があるんだよ。そのエフ氏に日本語を教えてやっているんだよ」

正太は、一向平気でもって、そういった。

「まあ、人造人間が日本語を覚えるなんて、ずいぶん変なことね」

「なかなかよく覚えるんだよ。僕が“ずいぶん寒いですね”というと、エフ氏もまたすぐ後から“ずいぶん寒いですね”と、おなじことをいうんだよ。そして僕の声をまねして、おなじような声で喋るんだ。あまりおかしくて、僕吹きだしちゃった」

「まあ――」

「するとエフ氏もまたそのあとで、僕がやったと同じように、ぷーっとふきだしたので、大笑いだったよ。あははは」

「まあ、変ね」

マリ子にとっては、それはおかしいというよりも、むしろ気味のわるいことであった。このときマリ子が、気味わるく感じたことはまちがいではなかったようである。なぜならば、後にこのときのことをもう一度はっきり思いださねばならぬような恐ろしい事件が起ったのであるから。正太は、マリ子のとめるのもきかないで、そののちも、あきもせずに今日一日だけはとか、もう一日だけはなどといいながら、それでも四五日もイワノフ博士のところへ通ったであろうか。