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じんぞうにんげんエフし
人造人間エフ氏
海野 十三
「ラヂオ子供のテキスト」日本放送協会出版、1939(昭和14)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 53,879 字 · 109 页
人造人間の家
このものがたりは、ソ連の有名な港町ウラジオ市にはじまる。そのウラジオの街を、山の方にのぼってゆくと、誰でもすぐ目につくだろうが、白い大きな壁と、そのうえに青くさびた丸い屋根をいただき、尖った塔が灰色の空をつきさすように聳えているりっぱな建物がある。
「ああ、じつにりっぱなお寺だなあ」
知らない人は、きっとそういうであろう。ところが、この建物は、昔はお寺であったにちがいないが、今はそうではない。では、あれは一体どういう家なのであろうか? ほかでもない。あれこそイワノフ博士の『人造人間の家』なのである。
人造人間の家――というと、なんのことか分らないかもしれないが、もっとくわしくいうとこうである。イワノフ博士は、たいへんえらい科学者である。もうすっかり頭の禿げあがった老人であるが、若い学者にもまけない研究心をもっていて、ずいぶん古くから人造人間の研究にふけっている。あの寺院のあとへ引越してきたのが、今から十年前だったが、そのときは、タンクをつぎあわせたようなたいへんな恰好の機械人形の手をひいて、あの坂道をのぼっていったので、往来の人々はみな足をとどめてびっくりしたものである。