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じんぞうにんげんせんしゃのきみつ

人造人間戦車の機密

海野 十三

――金博士シリーズ・2――

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 9,501 字 · 19 页

青空文庫

醤は、このからからんという音を聞くたびに、寒山寺のさわやかなる秋の夕暮を想い出すそうである。――なにしろ、ここは、人跡まれなる濠洲の砂漠の真只中である。詰襟の服なんか、とても苦しくて、着ていられなかった。

この砂漠に、醤麾下の最後の百万名の手勢が、炎天下に色あげをされつつ、粛々として陣を張っているのであった。

これは余談に亘るが、彼れ醤は、日本軍のため、重慶を追われ、成都にいられなくなり、昆明ではクーデターが起り、遂に数奇を極めた一生をそこで終るかと思われたが、最後の手段として、某所に於て、英国政権に泣きつき、その結果、或る交換条件により、醤およびその麾下は、海を渡り、赤道を越え、遥かにこの南半球の濠洲のサンデー砂漠地帯の一区劃に移駐することを許された次第であった。

ここでは、熱砂は舞い、火喰い鳥は走り、カンガルーは飛び、先住民族たる原地人は、幅の広い鼻の下に白い骨を横に突き刺して附近に出没し、そのたびに、青竜刀がなくなったり、取っておきの老酒の甕が姿を消したり、泣き面に蜂の苦難つづきであったが、しかもなお彼は抗日精神に燃え、この広大なる濠洲の土の下に埋没している鉱物資源を掘り出し、重工業を旺んにし、大機械化兵団を再建してもう一度、中国大陸へ引返し、日本軍と戦いを交えたい決意だった。