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にんげんさんすいずまき

人間山水図巻

吉川 英治

「東京 創刊号」1947(昭和22)年4月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,343 字 · 21 页

青空文庫

それを王宮といえば、後宮三千の美姫、金銀財宝の山を想像させるような、朝威を形づくったから、何遍だって滅ぶのだ。当然痩土の飢民の眼からは、常にそこは大きな物質の対照にされるだろう。従って、乱が兆すと忽ち業火と掠奪のうき目にあい、この世ばかりか、その追及は、地下百尺まで追いかけてゆくじゃあないか。――なぜならば、何たる因果か、王家の墳墓といえば、柩の中まで珠玉珍宝を詰めこんでゆくものだから、秦朝の墳墓といい、漢室の墳墓といい、王妃の墓で発掘かれていないところはない位だ』

『すると、君もいかんことになるね』

『なぜ』

『柩に財宝を入れて担ぎ歩いているじゃないか』

二人は大笑いした。手下の者は、炉のまわりに早や寝ころんでいた。

『おい、夏駿。ほかの者が寝こんだらしいから云うが、君はいったい、どういう量見で、泥棒なぞ始めたんだい。よも、本性じゃあるまいが』

『誰が泥棒なぞを好きこのんでやってる奴があるものか。だが、仕方がないじゃないか』

『生きるだけの為なら、何とか思案がありそうなものじゃないか』

『じゃあ、蕭照、おまえには思案があるかい』

蕭照は、返辞に困った。

夏駿は偽りのない様子でまたこう云った。