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にんげんかい

人間灰

海野 十三

「新青年」博文館、1934(昭和9)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 16,345 字 · 33 页

青空文庫

わしが知るまいと思ってもこれは門衛が証明している。そうしたと思ったら、忘れ物をしたというので、七時半ごろ再びトラックに乗って引返してきた。そしてまた八時ごろになって、本当に帰ってしまった。君が引返してきたときには、工場の中には自室で読書に夢中の博士と、別館には婦人が居ることだけで外に誰も居ないと知っていたのだ。そして約三十分の間に、実に器用な夫人殺害と、屍体の空中散華とをやって、八時頃なに食わぬ顔で帰ったのだ。どうだ恐れ入ったか!」

「それはこじつけです。私はそんなことをしません」

「夫人を殺害しないと云っても、それを証明することができんじゃないか。君に味方するものはおらん」

「そんなに云うなら、私は云いたいことがあります。これは貴下の恥になると思って云わなかったことですが……」

「ナニ恥とは何だ」署長は眼の色を変えた。

「恥に違いありませんよ。貴下方はあの晩湖水の上空から撒かれた人間灰が、珠江夫人のだと思いこんでいるようですが、それは大間違いですよ。湖畔で採取した人肉の血型検査によるとO型だったというじゃありませんか。しかし夫人の血型はAB型です。これは先年夫人が大病のとき、輸血の必要があって医者が調べて行った結果です。