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ものをこわすのがしょうばいじけん
什器破壊業事件
海野 十三
「大洋」1939(昭和14)年9月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 15,352 字 · 31 页
その代り、他の雇人隊が、口を揃えて光枝の不始末を叱りつけ、があがあぶつぶつはいつ果つとも見えなかった。するとまた、奥の方からずしんずしんどんどんと、旦那様の豪快なる跫音が近づき、
「こりゃ、いつまでも騒々しいじゃないか。壊れたものはしようがない。早く片づけて、しずかにしろ。このバルシャガルどもめ!」なにがバルシャガルどもめか、なにしろこの旦那様のいう言葉の中には、時として訳の分らない言葉がとびだす。
とにかく、ギンヤこと風間光枝の什器破壊業の店開きは、こうして行われた。
そのとき光枝が感じたことは、物を壊すことは、案外気持のいいことである。もちろん物資愛護の叫ばれる現下の国策に背馳する行為ではあったが、しかし光枝の場合は、壊すための理由があった。つまりそれは、帆村探偵から頼まれて、なにかの事件解決のためやっていることゆえ、国策に背馳するものだとはいえない安心があった。すなわち、がちゃーんの音を聞く瞬間、光枝の胸の中に鬱積した不満感といったようなものが、一時的ではあったが、たちまち雲散霧消してしまうのを感じたことであった。
だが、なにゆえに、什器破壊作業をやらなければならないか、その理由の本体については光枝は何にも知らなかったし、なんにも思い当ることがなかった。